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「応用情報技術者試験」は、ITエンジニアとしてステップアップするために取得しておきたい資格の1つです。合格すれば資格手当が出る会社もあるため、気になっている方も多いでしょう。
この記事では、応用情報技術者試験の概要や難易度、勉強方法についてご紹介します。この記事を参考に概要や難易度を把握し、自分にあった学習方法やスケジュールを検討してみましょう。
応用情報技術者試験とは
「応用情報技術者試験」とは、IPAが認定している国家試験「情報処理技術者試験」の一種で、「ワンランク上のITエンジニア」を目指す人を対象とした資格試験です。
ここではまず、応用情報技術者試験の概要について解説します。
試験概要
応用情報技術者試験は、「午前」と「午後」の2つの試験で構成されています。両方の試験で基準に達していなければ合格できない仕組みです。
科目 | 試験時間 | 解答数/出題数 | 出題形式 | 合格基準 |
午前 | 150分 | 80問/80問 | 四肢択一 | 60点/100点満点 |
午後 | 150分 | 5問/11問 | 記述式 | 60点/100点満点 |
「午前」試験は80問出題され80問に解答し、「午後」試験は11問出題され、そのうち5問に解答する形になります。「午後」試験では「情報セキュリティ」だけは全員が必ず選択しなければなりませんが、残り4問は自由に選択できます。
午前試験は四肢択一式の試験ですが、午後試験は記述式で回答します。長文を読解して解答する問題になっているため、読解力も合格のカギです。
(参考:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要項Ver. 5.0)
対象者
応用情報技術者試験の公式HPでは、試験の対象者像について以下のように記載されています。
「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」
(引用:応用情報技術者試験)
ITサービスやシステム、ソフトウェアを開発するための「応用的」スキルを備えた人材が対象となっており、IT業界で一定の経験を積んだ人の受験が推奨されます。
たとえば、基本情報技術者試験の対象者の業務内容については「上位者の指導の下で」という文言が入っているのに対し、応用情報技術者試験の対象者の業務内容には、そのような文言が入っていません。
(参考:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要項Ver. 5.0)
つまり応用情報技術者試験は、先輩や上司の指導を受けることなく、単独でITサービスの開発に関する一定の業務に従事できるエンジニアが対象となっているのです。こうした点からも、対象者に高い技術レベルが求められることが分かるでしょう。
出題範囲
「午前」試験と「午後」試験それぞれの出題範囲は以下の通りです。
科目 | 出題範囲 |
午前 | ・テクノロジ系 基礎理論 アルゴリズムとプログラミング ソフトウェア ハードウェア データベース ネットワーク セキュリティ など ・マネジメント系 プロジェクトマネジメント サービスマネジメント システム監査 など ・ストラテジ系 経営戦略マネジメント ビジネスインダストリ 企業活動 法務 など |
午後 | ・経営戦略に関すること
・情報戦略に関すること ・戦略立案・コンサルティングの技法に関すること ・システムアーキテクチャに関すること ・サービスマネジメントに関すること ・プロジェクトマネジメントに関すること ・ネットワークに関すること ・データベースに関すること ・プログラミング全般に関すること ・組み込みシステム開発に関すること ・情報システム開発に関すること ・プログラミングに関すること ・情報セキュリティの確保に関すること ・システム監査に関すること |
(参考:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要項Ver. 5.0)
応用情報技術者試験の難易度
ここでは、応用情報技術者試験の受験者数・合格率の推移や難易度について解説します。
受験者数・合格率の推移
はじめに、受験者数と合格率の推移について解説します。
年度 | 受験者数 | 合格率 |
令和元年度秋期 | 32,845人 | 23.0% |
令和2年度10月 | 29,024人 | 23.5% |
令和3年度春期 | 26,185人 | 24.0% |
令和3年度秋期 | 33,513人 | 23.0% |
令和4年度春期 | 32,189人 | 24.3% |
令和4年度秋期 | 36,329人 | 26.2% |
(参考:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 統計資料)
例年、合格率は20%台となっています。応用情報技術者試験では、午前試験と午後試験の両方に合格しなければなりませんが、午前試験で合格点を下回っている場合、午後試験は採点されません。それぞれの合格率が約50%程度になっており、午前試験で受験者の約半分が不合格に、午後試験でさらに約半分が不合格になることから、全体の合格率がおよそ25%程度になっているのです。
情報処理技術者試験としての難易度
IPAが実施している「情報処理技術者試験」は、難易度によってレベル1~4に区分されています。
応用情報技術者試験の難易度は上から2番目の「レベル3」です。
基本情報技術者試験や情報セキュリティマネジメント試験といった「レベル2」の試験よりも高レベルな問題が出題され、記述式の試験もあるため難易度は大きく上がります。
IT経験者にとっての難易度
IT経験者であっても、応用情報技術者試験に合格するには十分な勉強が求められます。実務経験があったとしても、勉強なしに合格することは困難でしょう。各人の技量や知識によって差がありますが、合格のための勉強時間の目安は200時間程度と考えられています。
基本情報技術者試験に合格した後、さらなるステップアップのために受験する人が多いようです。
IT未経験者でも受験できる?
応用情報技術者試験は、IT未経験者でも受験することができます。受験資格といったものはないため、基本情報技術者試験等に合格していなくても、試験自体は受けられます。
しかし、IT未経験から応用情報技術者試験を受験するのはあまりおすすめできません。IT未経験者には難易度が高すぎるからです。未経験からエンジニアとしての転職を目指す場合、資格を取得するのであれば基本情報技術者試験までで十分です。
エンジニアとして転職した後、さらなるステップアップの手段として、応用情報技術者試験の受験を検討してみましょう。
応用情報技術者試験の勉強方法
最後に、応用情報技術者試験の勉強方法について解説します。
勉強方法として、「独学」か「講座の受講」という2つが挙げられます。
独学
ITエンジニアとしての実務経験があれば、独学でも応用情報技術者試験への合格は十分に可能です。参考書や学習サイトも豊富に提供されているため、学習手段に困ることはないでしょう。
応用情報技術者試験において、合格の大きな壁となるのが、記述式で実施される午後試験です。「情報セキュリティ」に関する問題以外は好きな問題を選択できるため、自分の得意分野に絞って勉強を重ねると良いでしょう。長文を読解する力、解答を正確に記述する力が要求されるので、過去問を十分に解いて問題形式に慣れておく必要があります。
講座の受講
講座を受講して合格を目指す手段もあります。講座の受講には、以下のようなメリットがあります。
- 挫折しにくい
- 効率的に学習できる
- 計画的に学習できる
講座を受講することで、試験の要点をおさえた効率的な学習が可能となります。独学よりも効率よく学習できるため、試験勉強になれていない方でも安心して学習を進めることができるでしょう。モチベーションを保ちやすく、試験のためのスケジュール管理もしやすいため、合格の可能性を高めることができます。
まとめ|応用情報技術者試験でワンランク上のエンジニアへ
「応用情報技術者試験」は、「ワンランク上」のエンジニアを目指す方を対象とした資格試験です。ITエンジニアとして経験を積んだ方は、ぜひチャレンジしてステップアップを目指しましょう。
応用情報技術者試験に合格するには、午後試験で出題される記述式の問題への対策を重点的に行う必要があります。自分の得意分野をふまえて問題を絞り、過去問をやりこんで対策しておきましょう。
独学での受験に自信がない方には、講座の受講もおすすめです。独学でも十分に合格は可能ですが、より効率的に学習を進め、合格率を上げたい方は講座の受講も検討してみてください。