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「ITストラテジスト試験」は、ITエンジニア向けの資格の中でも、経営戦略やビジネスに特化した資格試験です。難易度が高いものの、合格できればキャリアアップのための大きな武器になるため、取得を検討している方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ITストラテジスト試験の概要や難易度、勉強方法について解説します。この記事を参考に、自分に合った勉強方法やスケジュールを検討してみてください。
ITストラテジスト試験とは
「ITストラテジスト試験」とは、IPAが認定している国家試験「情報処理技術者試験」の一種で、「経営とITを結びつける戦略家」を目指す人を対象とした資格試験です。
ここではまず、ITストラテジスト試験の概要について解説します。
試験概要
ITストラテジスト試験は、「午前Ⅰ」「午前Ⅱ」「午後Ⅰ」「午後Ⅱ」の計4つの試験で構成されています。すべての試験で合格ラインをクリアしなければ合格にはなりません。
科目 | 試験時間 | 解答数/出題数 | 出題形式 | 合格基準 |
午前Ⅰ | 50分 | 30問/30問 | 四肢択一 | 60点/100点満点 |
午前Ⅱ | 40分 | 25問/25問 | 四肢択一 | 60点/100点満点 |
午後Ⅰ | 90分 | 2問/4問 | 記述式 | 60点/100点満点 |
午後Ⅱ | 120分 | 1問/3問 | 記述式 | A~Dのランク評価 Aランクのみ合格 |
午前試験は四肢択一式の選択問題です。午前Ⅰ試験は応用情報技術者試験の問題から30問が抜粋される形で実施され、難易度はそれほど高くはありませんが、扱われる範囲が広いのが特徴です。
午前Ⅰ試験には免除制度があり、以下のいずれかの条件を満たせば、2年間は午前Ⅰ試験が免除されます。
- 応用情報技術者試験の合格者
- 高度情報処理技術者試験または情報処理安全確保支援士試験の合格者
- 高度情報処理技術者試験または情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点を獲得した人
午前Ⅱ試験はITストラテジストの専門的な内容が出題されます。
午後試験は記述式の問題となっています。より専門的な問題が出題され、企業の事業戦略や情報システム戦略、事業のシステム化構想など、ITと経営に関する高度な知識が要求されます。
対象者
ITストラテジスト試験の公式HPには、対象者像は以下のように記載されています。
「高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステム・IoTを利用したシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者」
(引用:ITストラテジスト試験|IPA独立行政法人情報処理推進機構)
ITの専門的な知識を備えているだけでなく、ビジネスモデルや経営戦略をふまえた戦略策定ができる人材が対象となっています。
事業戦略の策定や経営者へのフィードバック、情報システム戦略の評価、セキュリティリスクの分析、対策など、幅広く高度なスキルが要求される試験です。
出題範囲
午前Ⅱ試験と、午後Ⅰ・午後Ⅱ試験の出題範囲は以下の通りです。
科目 | 出題範囲 |
午前Ⅱ | ・テクノロジ系 セキュリティ・ストラテジ系 システム戦略 経営戦略 企業と法務 |
午後 | ・業種ごとの事業特性を反映し情報技術(IT)を活用した事業戦略の策定に関すること
・業種ごとの事業特性を反映した情報システム戦略と全体システム化計画の策定に関すること ・業種ごとの事業特性を反映した個別システム化構想・計画の策定に関すること ・事業ごとの前提や制約を考慮した情報システム戦略の実行管理と評価に関すること ・組込みシステム・IoT を利用したシステムの企画,開発,サポート及び保守計画の策定・推進に関すること |
(参考:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要項Ver. 5.0)
ITストラテジスト試験の難易度
ここでは、ITストラテジスト試験の受験者数・合格率の推移や難易度について解説します。
受験者数・合格率の推移
はじめに、受験者数と合格率の推移を紹介します。
年度 | 受験者数 | 合格率 |
平成29年度秋期 | 4,747人 | 14.7% |
平成30年度秋期 | 4,975人 | 14.3% |
令和元年度秋期 | 4,938人 | 15.4% |
令和3年度春期 | 3,783人 | 15.3% |
令和4年度春期 | 4,450人 | 14.8% |
(参考:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 統計資料)
例年、合格率は14~15%台となっており、難易度の高い試験であることが分かります。
情報処理技術者試験としての難易度
IPAが実施している「情報処理技術者試験」は、難易度によってレベル1~4に区分されています。
ITストラテジスト試験の難易度は最も高い「レベル4」です。
同じくレベル4の他の高度情報処理技術者試験と比較しても難易度が高い試験として知られており、「プロジェクトマネージャ試験」と並んで最難関と称されることもあります。
IT経験者にとっての難易度
IT経験者であっても、ITストラテジスト試験への合格は簡単ではありません。ITに関する幅広く高度な知識と経験が求められるだけでなく、経営戦略や事業戦略の策定やリスクマネジメントに関する実践的な知識が要求されるからです。
ITストラテジストは、企業によってはCIOやCTOに相当する役職です。もちろん、資格がなくてもITストラテジストとして働くことは可能ですが、資格の取得によってキャリアアップを目指す方が多いようです。
ITストラテジスト試験の難易度が高い理由
ITストラテジスト試験の難易度が高いのには、以下の理由があります。
- 出題範囲の広さ
- 出題・解答形式の複雑さ
出題範囲の広さ
ITストラテジスト試験では、ストラテジ系に特化してはいるものの幅広い問題が出題されます。午前Ⅰ試験は応用情報技術者試験からの出題のため、難易度はあまり高くはなく、免除制度もあるため比較的対策しやすいでしょう。
午前Ⅱ試験と午後Ⅰ・午後Ⅱ試験はストラテジ系の問題が出題されますが、経営戦略やシステム化構想、組み込み・IoTシステムなど、出題範囲が広い試験となっています。
出題・解答形式の複雑さ
ITストラテジスト試験の午後試験は、出題・解答形式が複雑なため、対策が難しい試験となっています。午後Ⅰ・午後Ⅱ試験は記述式の問題となっており、問題文を正確に読み取る力と、自身の知識や経験を正しく解答に反映する力が求められます。
特に午後Ⅱ試験は小論文形式の試験となっており、合計で2000~4000字近い文字数での論述が必要になります。過去問をメインに十分な練習と対策が求められるでしょう。
ITストラテジスト試験の勉強方法
ITストラテジスト試験の勉強方法には、「独学」と「講座の受講」という2つの方法があります。
独学
難易度は高いものの、経験があり十分な勉強時間が確保できる方であれば、独学での合格も不可能ではありません。参考書や学習サイトも十分にあるため、学習手段に困ることはないでしょう。
特に合格への壁となるのは、記述式で実施される午後試験です。読解力と文章力が要求されるので、過去問や模擬試験を十分に解いて問題形式に慣れておく必要があります。また、最新のIT業界の動向をふまえた問題も出題されているため、企業のIT導入事例やIoTの活用事例について、キャッチアップしておくと良いでしょう。
講座の受講
ITストラテジスト試験は、講座を受講して合格を目指す手段もあります。情報処理技術者試験の中でも特に難易度の高い試験なので、可能であれば講座を受講して対策することをおすすめします。
独学よりも効率よく学習でき、模擬試験の受講や記述式試験の解答添削などを受けられるため、合格の可能性を大きく上げられるでしょう。
まとめ|ITストラテジスト試験で経営に強いスペシャリストへ
ITストラテジスト試験は、ITに関する幅広く高度な知識と、経営やビジネスに関する実践的な知識が要求される高度な資格試験です。ITエンジニアとして経験がある方でも、合格は簡単ではありません。
午後試験を中心に十分に対策を練り、記述式の問題形式に慣れ、ITの最新動向にも触れておく必要があります。
独学では難易度が高いため、講座の受講も視野に入れて検討してみてください。特に論述問題の添削は独学ではなかなか受けられないため、有効活用すると良いでしょう。